夏休みとかありませんが男は強く生きるのです。

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朝は5時頃に起きて、ラジオ体操の前に秘密の「穴場」にクワガタを探しに行く。木の根元を掘ったり、細い木を蹴飛ばして揺らし、落ちてきたものを捕まえたり。ひと通り探したら大きいミヤマクワガタとのノコギリクワガタのオスだけを虫カゴに入れて後は逃がす。 ラジオ体操では上級生のお兄さんに、出席カードにハンコを押してもらって、帰り道はまたクワガタを探しながら帰る。家に帰って朝ごはんを食べたら、その日のノルマの宿題を超スピードで片付けて、プールの準備。アニメの再放送を見てから自転車でプールに出発。途中でっかいキリギリスを発見し、後を追うも見失う。 プールでは石を投げて、潜って取るという遊びをひたすら繰り返す。唇が紫色になった頃に飽きてプール遊びは終了。Tシャツの暖かさが心地良いが、それも一瞬で、外に出るとムワッとする暑さ。友達は駄菓子屋さんでアイスを買っているが僕はお小遣いが無いので我慢。一口だけもらう。 お昼のサイレンが鳴ったので急いで家に帰ってお昼ごはん。両親が共働きのため、今日は姉が焼きそばを作ってくれた。「笑っていいとも」を見ながら焼きそばを食べる。僕は「あなたの知らない世界」が見たいのに。 午後から友達の家に行こうと思ってたので電話をしてみるが、友達はいないようだ。急に予定が無くなったので、兄と兄の友達の魚釣りに同行する事に。嫌な顔をされたし、意地悪されそうだけど、一人でいるよりはマシだ。 近所の空き地に畳が捨ててあるので、そこに行ってミミズを捕る。半分腐った畳をひっくり返すと下になっていた地面には、大量のミミズがいる。結構びっくりするくらいの巨大なミミズもいるが、釣りの餌にする時ちぎらなくてはいけないので、適度なサイズのものを捕まえる。5分ほどで餌入れには大量のミミズが貯まる。 準備は出来たので釣り場に向かう、兄達のとっておきの場所なので、絶対に他の人に教えてはいけないと、何度も約束させられる。自転車で堤防の上の未舗装の道(車の轍でなんとか道だと判るレベルの道路)をひたすら上流方面に向かう。小さな僕は兄達に付いて行くのがやっとだが、ここで泣き言を言うと二度と連れて来てくれないので、泣きそうになりながらも必死でついて行く。 途中蛇の抜け殻を見つけたり、スズメバチの巣を発見したり、クワガタ捕りの新しい穴場を発見したりしながら1時間ほどで目的の釣り場に到着。小さな川の上流部にある、もっと小さな川とさらに小さな川の合流地点。 水の流れの力で合流部は深くえぐれており、複雑な流れと淀みを作り出していて、周りに生えている柳の木が水面に影を作っているため、魚たちの絶好の隠れ場所なっている様だ。以前に何度も40cmオーバーのニジマスを釣っている。 今日は時間も悪かったのだろうか、小さなヤマメ何匹かのウグイしか釣れず、夕飯までに家に帰るため釣り場を後にする。帰り道の方が短く感じるのは何故だろうか。疲れているせいもあり、会話も殆ど無いまま家にたどり着く。 台所では両親が慌ただしく夕飯の準備をしている。トムとジェリーの再放送をみていたら夕飯の時間だ。ザンギ(鶏の唐揚げ)と冷や麦は夏の定番メニューだ。時々入っているピンク色の麺を妹に取られたが、それくらいで泣いたりする歳では無い。 夕飯の後はテレビを見たいのだが、親父がナイターを見ているので、好きな番組は見る事が出来ない。巨人は嫌いだと良いながら毎日飽きもせず見ているのは何故だろうか。不思議に思いながらも逆らっても無駄なので、大人しく兄貴とガンプラで遊ぶ。 9時からはジャッキーチェンの「酔拳」が放送されるのだが、ナイターが延長されていて気が気ではない。「最初の方なんて見なくても大丈夫だろ」親父の意味不明の理論でナイターを終わりまで見る。結構良い所から見始めた酔拳もクライマックスの前に、疲れて眠ってしまう。 親父が後で寝床まで運んでくれるのだが、起きる事無く朝までぐっすりと眠るのだ。そしてまた早朝から全力を尽くして遊び回る。何日かしたらお婆ちゃんの家に行って、親戚からお小遣いをもらい、スイカを食って花火をして、盆踊り・お祭りの夜店、まだまだ楽しい事は目白押しだ。 そんな夏はもう二度とこないだろうけど、もっと楽しい夏を誰かの為に。 俺なら出来る。これを読んでいるお前はもっと出来る。 そうだ俺の為に楽しい夏を演出してくれ。 俺は他力本願で行く!!!!!

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